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DNAとは


 皆さんはDNA(注)と聞いて何を考えますか?命の源? いや、DNAは原子が寄り集まったただの分子です。
そこに何らかの意図や他の物質にない特異性(神秘性)があるわけではありません。ただ構成している原子の数が多いので、これを高分子化合物といっています。高分子化合物というのは、他にもゴムやプラスチックがありますが、床にプラスチックの破片が落ちていて、そこに命を感じますか?
「DNAは自分自身を複製できる」といわれていますが、それってどういう意味でしょう?宇宙空間にDNAが一つあったら、いつの間にか二つになっていた?そんなことが起こったら大変です。
DNAはただの物質です。自然法則を超えて作用することはない。意志もなければ、生命を支配しているわけでもない。ただし、細胞内部にあれば、化学反応によって複製します。裸のままでは当然無理です。既に材料がそろっていて、部品が組み立てられる寸前の形で準備されていてはじめて複製が行われるのです。
つまり複製が行われるのはDNAだけではありません。似たような高分子化合物でも複製は起こります。その際その高分子化合物特有の環境がそろっていなければなりません。細胞内部はDNAにとって最良です。つまり長い時間をかけて進化してきた結果です。
(注)DNAとは、デオキシリボ核酸の略で、デオキシリボースという糖を持った核(細胞中に存在する)酸(酸性を示す)という高分子化合物という意味。

このDNAがどういう仕組みで、細胞を作っていくのかをイメージ的に示しました。図40「遺伝子DNAとは」を参照。
ここであらためてDNAの特徴をまとめてみましょう。

1.DNAはただの高分子化合物

DNAに限らず、特に有機化合物は(無機化合物でも)、その周りに別の有機化合物を誘導する(引き付ける)性質があります。
DNAのような規則的なパターンをもつ高分子化合物は、そのパターン特有の物質を誘導します。たとえばアミノ酸のようなものが規則的にDNAの周りに集められ、パターンの順番どおりに並んで、縮合反応(水の分子H2Oを取り出すことによって結合する化学反応)によって結合して、それが数珠のように長く連なったら、それはもうタンパク質の誕生です。つまり特定のタンパク質を合成する仕組みはDNAのパターンに従うということです。この合成された(多数の)タンパク質によって細胞の性質が決定されます。
ただ物質同士は引き付けあうという単純なことが、長く伸びたDNAの規則性によって、DNAはまさに生物を形成する設計図になる。というわけです。(補足1)

2.DNAは身体の設計図?

DNAと例えば建物の設計図とは決定的に違うところがあります。
それは、家の設計図において2階へ上がる階段が25段なら、浴室が北側あろうが南側にあろうが、つまり他の部分の設計図がどうなっていようと、階段は25段で変わらないのです。(当たり前)
ところがDNAでは、例えば目を作る遺伝子は、その目を作る部分以外のDNAの配列にも影響されるということです。
その証拠は、もし目を作るその部分だけを残し他をすべて取り去ったものから目ができるでしょうか?できるわけがありません。目どころか?生体自身が作られないでしょう。つまり目一つ作るのにもDNAの様々な部分が関係しているのです。そういう意味でDNAは全体で一つなのです。
従ってDNAのパターンから身体全体の構成を読み取ることは不可能ではないにしても困難を極めることになるでしょう。このことが、再生医療がうまく進まない理由の一つです。

3.DNAは生物の行動を支配しているわけではない

DNAは我々のすべてを決定している。それは感情、思考、そして志向、指向、嗜好に至るまで、それを求めるようにあらかじめプログラム(行動を決定するもと)されていることを意味する。我々は意識するしないに関わらず、すべての行動において、DNAの支配から抜け出すことはできない。
確かに我々は生物である限りDNAと関わっている。そしてすべての身体構造、そしてその身体構造の(ある意味機械的な)機能としての思考、感情、好みを含めて、DNAによってプログラムされていることは確かです。
しかし、では、DNAの目的って何?
DNAの目的と言うよりも、生物の目的って何でしょう?
これは大きい問題であり、簡単に答えが出るものではないと思います。青山ももう何十年も前から考えてきました。
単純に考えて、生物の目的は、増殖(数の問題)なのか、はたまた連続(生き残りの問題)なのか、に分けられます。動物の中にはたくさん産んであまり育てることに熱心でないもの(魚類など)と、少ししか産まなくて大事に(子煩悩的に可愛がって)育てるもの(パンダとか)がいます。魚はたくさん産むため稚魚1ぴき1ぴきを大事に育てることは経済的に無理。数の問題から言えばパンダは不適合。しかしどっちが生き残るかといえばどっちもどっち。
つまり生物の目的は、増殖にあるのではなく連続にあることは明らかです。増殖も連続のためにあるのです。たくさん産めば生き残る可能性も高いため。(補足2)
明らかな誤りとして、「生物の目的は、種の保存」説。ではなぜ同じ種同士で争うの?それは生存能力の高いもの(強いもの)を生き残らせることによって、種としての生き残りを有利にする。哺乳類のオスがメスをめぐって争うのはそのため。
否、生物を観察すればわかることですが、強いものが生き残るとは限りませんよ。争いを避ける生き方も選択できるはず。
さらに誤った考え方として、「生物の目的は、生物全般の維持」説、ではなぜ滅んだ種(恐竜など)が存在するの?それはより賢い生物(哺乳類)を生き残らせる方が生物全体として有利だから。
否、滅んだものが不適格者である根拠などありませんよ。それと「生物全体として有利」って何のことを言っているの?
さて、ここからは仮説です。生物の生きる目的をDNAの目的に置き換えてみましょう。DNAの目的は「自己の保存」。つまり永遠に死なないこと。しかしそれは不可能です。DNAは細胞の中に存在します。そして細胞は必ず死にます。細胞が死なない方法は、同じ細胞を増殖し続けること。新しく生まれた細胞は古い細胞より生き延びる可能性が高い。
しかしそのためには、無限に増殖を続けなければならない。無限大に身長の高い生物ができてしまう。それはありえませんよね。なぜなら資源は有限だからです。有限な生物は必ず死にます。(詳しくは後程)
その問題を解決する唯一の可能性は、全く新しい個体を作ることでする。すなわち有性生殖。
しかしこの有性生殖では、生まれてくる子供のDNAは、父親のDNAとも母親のDNAとも異なります。この時点でDNAの戦略は失敗です。確かに似たような生物は残せるかもしれません。しかし似ているだけでは駄目です。完全に一致しなければ「自身」ではありません。(補足3)

結局我々は遺伝子DNAから影響を受けているだけで、支配を受けているわけではないということ。遺伝子がどうあれ、我々は自分の意志によって自由な生き方を選択できるということです。
その根拠として、同じ環境で育てられた双子(一卵性双生児)を見ればわかります。生き方の選択は異なる。同じ職業につくとは限らない。
さらに、最近結婚しても子供を作らない夫婦が増えているそうです。理由は子育てにはお金がかかるというもの。育てた子供が自分たちの老後をみてくれるわけではないから。だったら夫婦二人で誰にも邪魔されずに楽しく生きることを選択してもいいじゃないか。
子供を産むか産まないかなんて、当人同士が納得すれば第三者からガタガタ言われる筋合いはない。それはその夫婦が自ら選択した生き方です。たとえばその夫婦には、子供は何人でも欲しいという思いがあり、実際沢山の子供を産んでいたとしても、その遺伝子を受け継いだ子供たちは、逆に子供を産まないという選択をした。ということも十分あり得ることでしょう。

(補足1) DNAに関してときどき誤解している人(中には”科学者”もいるかもしれない)を見かけますが、DNAは確かに特別な物質ではありません。ごく普通の高分子化合物です。しかしDNAはまったく偶然に生まれたわけではありません。自然法則に従って必然的に生成されたのです。さらにDNAが生物の遺伝にとって重要な役割りを果たしているのには訳があります。DNAを含めて炭素を基本とした化合物が複雑なものに進化したのには理由があります。炭素は4つの結合ヵ所を持ちますが、この4ヵ所の先で隣の原子と結合することが、この”3次元空間”ではとても安定し且つ複雑な構造を持つ上で有効なのです。(この4ヵ所が正四面体の4つの頂点に対応する)
すなわち、DNAが選択されたことに、必然的理由が存在するのです。(細かい点では偶然かもしれないが)

(補足2) 生物の目的は連続ではなく、増殖(出来る限り数を増やす)にあるのかもしれない。今の時代ではたくさん産むのは不利とみて、状況が変化するまで少なく産んで、時が来るのを待つという戦略。しかし状況が変化すればたくさん産むようになるように生態が切り替わるわけではないから、この説は誤り。

(補足3) DNAの形態を決定する最小単位を基として、それぞれの単位が戦略(自分と同じ個所を増やすこと)を取れば、有性生殖であってもその部分は生き残れるかもしれない。ただし、その部分だけでDNAは生きているわけでも増殖できるわけでもない。DNAが機能できる最小単位などない。つまりDNAは全体で一つである。

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